ついに孔明登場。他の人物もそうだが北方三国志の孔明も一味違う。
ひとりになると、孔明は部屋の隅にうずくまるようにして座った。
このまま、終ってしまうのか。畠の土と語らいながら、朽ち果てていくのか。夢を見ることさえ自分に禁じ、尽きることのない悔恨の日々の中で、いつか老いていくのか。
呻き声が聞えた。
自分の呻き声だった。
そして三度目の劉備の訪問でついに孔明は劉備とともに闘うことを宣言する。これまでいろんな三国志を読んで来たが、三顧の礼としてだけでなく三国志として最高の描写。電車の中で読みながら泣いてしまった。
「闘います、私は」
孔明は言っていた。
「劉備玄徳様のもとで、天下万民のために、闘います」
「まことに?」
「二言はありません」
劉備の眼が、孔明の顔を射抜いてきた。涙は、まだ流れたままだ。
そして北の制圧を終えた曹操が大軍を率いてやって来て、名高い長坂橋の戦い。張飛と趙雲が超人的な働き。感動と興奮が続く。
- 作者: 北方謙三
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 1997/08
- メディア: 単行本
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